猫にシャンプーは必要? 不要?

毛づくろい
ブラッシングとは違い、猫のシャンプーは必ずしなくてはならないものではありません。

猫は「グルーミング」といって、自分で毛づくろいをして被毛をきれいにする習性があります。
完全室内飼いの猫は汚れることも少ないため、基本的に日常的なシャンプーはしなくてもいいものと言えるでしょう。

ただし、皮膚病などの病気にかかったときや、排泄物で汚れてしまったときなど、猫にもシャンプーが必要になるケースがあります。

もともと泳いだり水浴びしたりする習性がない猫は水嫌いとしても知られており、「シャンプーをしようとしたら大暴れされた」、「怖がって逃げてしまう」というのはよく聞く話です。

いざというときスムーズに洗ってあげられるよう、普段からシャンプーに慣れさせておくのも大切といえるでしょう。

猫のシャンプー、こんなときはしたほうがいい

換毛期
基本的に、猫はシャンプーをしなくてもよい動物と説明しましたが、そんな猫でも洗ったほうがいいのはどんなときでしょうか。
3つのケースについて説明します。

抜け毛がたくさんある(換毛期)

猫には、被毛が生え変わる換毛期があります。
この時期は、驚くほど大量の毛が抜け落ち、猫が歩いた場所が毛だらけになってしまう、なんてことも。

猫の細い毛は床や家具の隙間に入り込みやすく、掃除するのも一苦労です。猫の抜け毛が飛散したままの状態は、見た目的にも衛生的にもよくありません。

日々のブラッシングである程度抜け毛を落としたうえでシャンプーをすれば、ブラッシングで取り除けなかった抜け毛も洗い流すことができます。
換毛期はとくに胃や腸に毛玉がたまってしまう「毛球症」という状態になりやすいため、ブラッシングやシャンプーなどの抜け毛対策が重要です。

汚れが目立つとき

毛づくろいで自らをきれいにできるとは言えども、汚れがゼロというわけではありません。
特に白などの明るい毛色の猫は汚れが目立ちやすく、気になるところですよね。

ブラッシングや濡れタオルで拭いても落としきれない汚れは、シャンプーですっきり洗ってあげるときれいになります。

長毛種

長い毛を持つもふもふな猫たちは、毛がもつれやすく、絡まりやすいという特徴があり、短毛の猫よりも念入りなお手入れが必要です。

毎日のブラッシングでは落としきれない汚れやニオイが付くこともあるため、定期的にシャンプーをしてあげるといいでしょう。
また、シャンプーと併せてリンスをすることで、被毛の乾燥による静電気を防止できます。

猫のシャンプーの手順

猫のシャワー中
続いて、実際に猫のシャンプーの手順を見ていきましょう。
「事前の準備」「ぬるま湯でしっかりと全身を濡らす」「すすぎ残しがないようにする」といったポイントを押さえるのがコツです。

シャンプー前にチェック

いきなり水で濡らすのではなく、まずはブラッシングのお手入れからスタートしましょう。
毛のもつれを解き、毛玉がある場合はできる限り取り除いておきます。

また、猫を洗うのに適した温度は35~38度程度のぬるま湯です。
熱すぎるお湯は皮膚を傷めてしまいますので、必ず「少しぬるいかな?」と感じるぐらいの温度で洗うようにしてください。

シャンプーは猫の体に原液をかけるのではなく、あらかじめお湯で2倍程度に希釈したものを使います。
ふんわりと泡立てたシャンプーで優しく包み込むように洗うのが正解です。

皮膚までしっかり濡らす

事前の準備ができたら、早速シャンプースタートです。まずは猫用に温度を調節したお湯で、全身すみずみまで濡らしましょう。

水を怖がる猫の場合、シャワーヘッドを猫の体に沿わせるように濡らすと負担が軽減できます。水圧は弱めで、優しくシャワーをあててください。

泡を乗せて優しく洗う

お湯で希釈したシャンプーをふんわりと泡立て、少しずつ猫の体に乗せるようにして洗いましょう。怖がらせないよう、お尻や後ろ足のほうから徐々に前に向かって洗うのがコツです。

爪を立ててゴシゴシするのは絶対にNG。デリケートな猫の被毛や皮膚を傷めないよう、指の腹を使って優しく洗いましょう。

手足やしっぽ、顔周りなどを洗われるのを嫌がる猫も少なくありません。
徐々に慣らしていければいいですが、どうしても洗うのが難しい場合は無理にシャンプーせず、濡れタオルで拭きとる程度にとどめておきましょう
猫のシャンプー中

しっかりすすぐ

シャンプーで大切なのは、仕上げのすすぎです。
薬剤のすすぎ残しは、かえって皮膚に負担をかける原因になってしまいます。
水圧と温度を低めにしたシャワーで、まんべんなくシャンプーを洗い落としましょう。

汚れがひどい場合は2度洗い

猫の汚れやニオイが取れないときは、2度洗いする方法もあります。1回目のすすぎのあと、再び気になる部分に泡を乗せて洗います。
また、リンスを使うと洗いあがりもよく、静電気の防止にもつながります。

長時間のシャンプーは猫の負担になってしまいますので、2度洗いの場合でも、できるだけ手早く済ませるようにしましょう。

なるべく短時間でシャンプーすることが重要

アニコム パフェ  高野 航平先生

入念なブラッシングやお湯の温度調整は事前におこなっておくなど、猫ちゃんの拘束時間を短縮しましょう。
スムーズにシャンプーするためには、猫ちゃんにシャンプーに協力してもらう時間を短くすることが重要です。一度でもシャンプーで嫌な思いをすると、次回以降のシャンプーが困難になるおそれがあります。

シャワーの音にどうしても驚いてしまう場合は、湯舟をためておき、そこからお湯をくんでかける方法も一つの手です。

また、2人体制でシャンプー担当とフード・おやつを与える担当とで手分けしておこなうなど、ご褒美を与えながら進めるとストレスの軽減が期待できます。このときにご褒美を食べてくれない場合は、ストレスが非常に高い状態であることが考えられるため、シャンプーを中止する指標にもなります。

猫のドライヤーのコツ

猫のタオルドライ
シャンプーのあと、忘れてはいけないのがドライヤーです。

大きな音や強風による衝撃を嫌がる猫もいますが、濡れたままでいるとかえってニオイが付いたり、皮膚病の原因になったりもします。
コツを押さえて、手早く乾かしてあげましょう。

しっかりタオルドライ

全身びしょ濡れ状態のままドライヤーを当てても、なかなか乾かすことはできません。
まずは優しくタオルドライし、余計な水気を取ってしまいましょう。吸水性の高いタオルがあると便利です。

ドライヤーは弱風で

早く乾かしたいがために「強風設定」でドライヤーを当てたくなるところですが、それはNG。ドライヤーによる轟音は猫を怖がらせてしまいます。

シャワーと同様、ドライヤーの風量も「弱風」設定で。ドライヤーは猫の体から10cm以上離して、猫に恐怖感を与えないよう、優しく乾かすことを心がけてください。

ブラシを使って根元から乾かす

表面は乾いたように見えても、根元に水分が残ってしまっているケースは少なくありません。
全身をしっかりとドライヤーするためには、ブラシを使いながら乾かすのがコツです。

濡れているときの毛は通常時よりも痛みやすいので、ブラシで強く引っ張らないよう注意を
全身の毛が根元からしっかり乾いたら、完成です。

最後にブラッシングで毛の流れを整えると、ふわふわに仕上がります。

獣医師に聞いた! 猫のシャンプーについてのQ&A

水やシャワーに慣れてもらうにはどうしたらいい?
猫ちゃんの五感を刺激することを意識し、シャワーの音を聞かせる、実際に触れさせる、においを嗅がせるなどの経験を通して、「お水やお湯は怖くない!」と学んでもらうとよいでしょう。適宜、ご褒美も与えながら実践してみてくださいね。

また、無理やり水に触れさせるのではなく、自主的に触れてもらうこともポイントです。浴槽におやつやおもちゃを浮かべるなど、猫ちゃんが自ら水に興味をもてるように工夫してみましょう。
シニア猫など普段からグルーミングをあまりしない猫は、定期的にシャンプーするべき?
一般的な猫ちゃんと同じように、ひどい汚れがあるなどシャンプーが必要な状態でなければ、積極的におこなわなくてもよいでしょう。

グルーミングが減ってくる原因は病気や痛み、体力の低下などの不調を抱えていることが多いです。そのため、シャンプーをおこなうことで疲れたり、状態を悪化させてしまったりすることも考えられます。

グルーミングが減っている場合には受診いただき、原因に応じたケアをおこなうとよいでしょう。
ドライヤーを嫌がって乾かすのが大変……。対策はある?
ほとんどの子が、はじめて聞く大きな音や強い風に驚いてしまいます。そのため、普段からドライヤーの音を聞かせたり、弱風を当てたりしながらごはんやおやつを与えていると、「ドライヤーを使うといいことがある!」と覚えてもらえます。

長時間のドライヤーの使用はストレスとなるだけでなく、肌の乾燥にもつながるため、ドライヤーの時間を短くするために、何枚もタオルを使用し、十分にタオルドライをおこなうこともポイントです。
どうしてもドライヤーの使用が困難な場合には、タオルドライとブラッシングを組み合わせ、室温を上げるなどして体の冷えを防ぎましょう。

獣医師からのメッセージ

アニコム パフェ  高野 航平先生

生後3カ月以内の子猫やワクチン接種直後、妊娠中、治療中、体調を崩している猫ちゃんなどは、シャンプーをおこなえない場合があるため、事前にかかりつけの先生に相談をしましょう。
皮膚病などでシャンプーが必要な場合を除いて、ほとんどの猫ちゃんにとってシャンプーは必須ではないため、ウェットシートや蒸しタオル、ドライシャンプーなどを活用するのも有効です。

シャンプーしても問題ない子であっても、ほとんどの猫はシャンプーに慣れていません。まずは、お風呂場を探検してもらう、シャワーの音を聞かせる、手足だけぬるま湯に触れてさせるといったスモールステップからはじめましょう。
決して焦らず、猫ちゃんのペースに合わせてください。シャンプーをすることは人が思っているよりも、緊張し体力を消耗してしまうため、シャンプー後はゆっくりと休ませてあげるとよいでしょう。
また、シャンプー時に意図せず爪を立ててしまうこともあるため、事前に爪切りをおこなっておくと安心です。

最近では猫ちゃんのシャンプーをおこなっているペットサロンもあるため、自宅でのシャンプーが難しい場合にはプロに相談するのも一つの手ですね。

まとめ

水嫌いな猫
猫飼い初心者の方に向けて、シャンプーの手順やコツについて解説しました。
水嫌いの猫を洗うのは難しく思えるかもしれませんが、子猫のころから徐々に慣れさせておくのが大切です。
また、汚れやニオイが気になるからとは言え、洗いすぎるのは猫の皮膚を傷めてしまいます。猫のシャンプーは、多くても月に1回程度が適切です。
シャンプータオルや水のいらないシャンプーも併用しながら、きれいな状態を保ってあげてくださいね。